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罪 -16- 追跡者

 平日の夕刻前。高速道路は空いていた。制限速度など無いかのようにアクセルを限界まで踏み込んで走る。目的地はまだ定めてはいないが、出来る限り遠くへ向かってそれから考えよう。邨木佑介は後部座席の桧坂紋志に、しばらく運転席のシートの後ろに掴まっているよう指示した。

 嵯院邸とは反対側へ向かったものの、さてどこへ向かうべきなのか──
 高速道路の入口を発見した時ようやく佑介は冷静さを取り戻した。やはり少し我を忘れていたのかもしれない、と自省する。何の作戦も無いのだからまずは敵──嵯院邸からの追手──から一刻も早く出来るだけ離れることだ。
 所持させられている携帯電話は何度か着信を告げたが、山間部に入ると沈黙した。便利かもしれないがこういう時は邪魔でしかない。


 いくつかの県境を越えたあたりでようやく佑介はサービスエリアにハンドルを切った。一度給油と休憩を挟まなければなるまい。車を停めると自分で驚くほど大きく息を吐いた。
「少し休もう」
 紋志にも車を降りるよう促すと大きく伸びをする。紋志はおとなしくそれに従った。
 閉じたドアにもたれかかって同じように伸びをした紋志はやはり大きく息を吐くと佑介の顔を見ている。
 紋志の表情は先ほどまでのまるで世界が今日終わるかのような絶望からは脱したようには見えるが、またその感情が容易には計り切れないような凪に戻っていた。

「自分の人生を生きるって、どうすればいいのか僕はよくわからないんですよ」

 車を走らせていた間じっと黙っていた紋志が突然口を開いた。
「ごめんなさい、ずっとそれ考えてました」
 空を見上げるように、ぽつりぽつりと言葉が漏れてくる。
「僕、母と一緒に住み込みで葛木家のお屋敷にいたんです。でもその母が亡くなって身寄りの無くなった僕を葛木家の旦那様はそのままあのお屋敷に住まわせてくれていました。そのまま学校にも通わせてもらってて。ただ、それだけでは申し訳ないのでせめて仕事をさせて下さいとお願いしてたくさんいた犬の世話をやらせてもらっていたんです。最初はまだ小さかったからたいして役にはたっていなかったかもしれないけど」


 佑介は自分も運転席のドア──紋志の隣にもたれかかったまま相槌も打たずにそれを聴いていた。紋志が屋敷に軟禁されていた時にもあの五千万の預金通帳にまつわる話は聞いていたが、紋志がさらに自分のことを話し始めたということは佑介に対する警戒心が薄れたということだろう。
「青乃さまはいつも寂しそうで、楽しそうなのは犬と遊んでいる時だけで。その頃まだ僕も青乃さまも小学生だったんだけど、犬を連れてる僕も犬と一緒に可愛がってくださって」
 その頃のことを思い出しているのか、紋志は少し嬉しそうに笑った。

 学校のお友達と遊ぶこともない、ご家族も揃うこともない、お食事はいつもひとりで。
 青乃さまはずっとずっと孤独だったんだと思います。

 いつからか青乃さまは毎日犬と遊ぶ時に僕の隣に座って寂しいと泣いてしまうようになって。だから僕は約束したんです。

──ぼくがそばにいます。

 

 それは幼い時の小さな約束。
 僕が守れなかった約束。

 

「でもそれが守れなかったのはおまえのせいじゃないだろ」
「青乃さまは僕が渡されたお金であの約束を売ってしまったと思ってられるんでしょう」
 紋志は頭を下げ深く深く息を吐いた。
「結婚して家族が出来て、あのかたはもう孤独じゃなくなっているだろうと僕は思っていたのにな……」

 どうしたら良かったんだろう。あのお金を受け取らなければ良かったのかな。

 もともと旦那様のご厚意で置いてもらっていたのだから、旦那様がお前は出て行けと仰ればどうしたってあの屋敷には僕の居場所はなかった──

 昔語りは最後には独り言のようになっていた。

 こいつにだって、もしかしたら当たり前に小学校、中学校、高校と通って、多くの友達を作って、部活でもやって、恋もして、昼間の大学に通って、遊んだり試験で悩んだり──そんな同世代の多くの若者が通ってきたような人生があったかもしれないのに。

 佑介はやりきれない想いが腹の奥底で膨らんでいるのを持て余す。
 彼はこれまでずっと、ずっと、誰かのためにしか自分の人生を使ってこなかったのだ。

 将来何かをしたいとか、何になりたいとか、いつか何かが欲しいとか。自分の未来のことなど何も考えず。
 ただ、あの恭太郎という男だけがそんな紋志を後ろから見守ってきたのだろう。

 あの焼け落ちた小さな店だけが、紋志がただの若者に戻れる場所だったのではないのか。

 なのに──


「この間あのお屋敷に呼ばれた日ね。僕は友人と飲みに行こうとしていました。目標の額までお金が貯まったからこれで僕は解放される、これで自分の人生を生きていけるって、僕だってあの時は確かに思ったんです。よし、たまには外で美味しいものを食べよう。友達とばかな話で時間をつぶそう。それから、次の休みには久しぶりに帰って恭さんの作った料理を食べたいな。そうだ、店でいちばん値段の高いものを注文して、ちゃんと自分の財布からお勘定をしてあげよう。恭さんはきっとびっくりして、でもすごく喜んで褒めてくれる。そしてこれからどうするか、ちゃんと恭さんと話そう──いざ自分の人生を生きられると思った時に、僕自身が考えたのは今日したいこと、明日したいこと、来週したいこと、毎日のほんの小さなことだけでした」

 そんな小さなことの積み重ねでも、きっと紋志は幸せだったのだ。
 いや、本当は人の幸せなど、そんな毎日の積み重ねで出来ているのだろう。
 なのにそれを、意識もせずに蟻を踏み潰すように奪われた。

 今の紋志に必要なのは、本当に小さな、何の憂いも無く笑えるだけの小さな幸せが手の届くところにあることなのだと佑介は何故か確信したように思った。

「──それじゃあこういうのはどうだ」
 一歩、紋志に近づく。そしてその背中を軽く叩いた。 
「そこでなんか地元の旨いもんでも食おう。さっきからずっといい匂いだ。腹も減ってきただろ」
 明るく笑って見せ、賑わう店の方へ向かうと紋志は少し驚いたように目をぱちぱちとさせてそれに続いた。サービスエリアの中のレストランではなく土地の串焼きなどが並ぶ店頭を見て回る。まるで追われていることが嘘のように佑介と紋志ははしゃぎながらそれを買っては食べ回った。一通り食べるとさすがに腹も満ちてくる。


 佑介はふと、こんなに笑ったのは妻を殺される前日以来だと思った。久しぶりすぎて、頬の筋肉が疲れていることがわかるくらいだ。

 

 忘れていた。

 いや、意識的に捨てていた。

 自分はこんなに、普通に笑える人間だったのだ。

「邨木さんて……」
「佑介でいい。あと、敬語もいらない」
「じゃあ佑介さんて。笑うと犬みたいな顔になるんだね。かわいい」

──佑介、目が子犬みたいだよね。普段いかつい癖になんかかわいいね。

 

「……未音にしかそんなこと言われたことないな」
「ミネさんって?彼女?」
 瞼の裏に、殺された妻の姿が蘇った。佑介をかわいいとからかった時の笑顔ではなく無残に息絶えた死に顔が──

 俺は妻の仇も討たずに何を楽しそうにやってるんだ。

 

「──死んだ妻のことだ」
 よほど表情ががらりと変わったのだろう。紋志がすまなそうな顔をしている。そういえば自分は紋志には何ひとつ自分のことを語っていなかった。

 すでに周囲は夕暮れの時間も過ぎ、闇が降りてきていた。近くに小川でもあるのか、小さな蝙蝠が通り過ぎる。
「あとで話すよ。とりあえず車に戻るか。この車もできれば早いうちにどこかに置いて新しい車に乗り換えたいし次のインターで一旦降りよう。中古車屋でもあればいいが」

 重くなってしまった空気をなんとか変えようと車に戻ろうと後ろを向いた時──


 不意に、手が握られた。
 敵の急襲に遭ったかのように咄嗟に身構える。
 振り返って視界に入ったのは驚いた顔の紋志だった。
「ごめん、びっくりした?」
 あやうく投げ飛ばすところだったことは隠して、いや、と言うと紋志はあらためて佑介の左手を両手でそっと握った。その手は紋志の全体から醸し出される雰囲気とは違って皮膚が固く、ごつごつした骨っぽい手だった。それは紋志が日頃、手の皮膚が厚くなるような労働で懸命に働いてきたことを表している。

「佑介さん、僕のために何か無理してるんだったら戻ってもいいんだよ」

 

「いや………」
 まるで何かのまじないででもあるかのように、紋志は佑介の手を包んだまま何度か上下させて笑った。
「僕ばっかり喋ってしまってごめんなさい。つらいことがあるんだったら聴くくらい僕にもできるから、無理しないで」


 鼻の奥がつうんとした気がして咄嗟に息を止める。
 そしてもう一度紋志の顔を見ると、少し困ったような、それでいて必死で誰か──この場合は自分──を気遣っている表情をしていた。

 そうか、こいつはこんな風にしてあの女主人のために小さな約束をして、それを守ろうとしてきたのか。いや、きっとあの女主人のためだけではない。言葉は悪いが相手が誰でも同じなのだ。誰にでも、こうやって寄り添おうとして──

 自分の根を生やす場所すら明け渡して。

 こんな風に生きてきたのか。

 何故か怒りに似た感情が湧き上がってきた。

 何を言ってるんだ。
 おまえこそ、今日だぞ。たった数時間前だ。
 きっとおまえにとって誰よりも大事だった人間の死を、さっき聞いたばかりじゃないか。
 人を気遣ってる場合か。もっと自分を可哀想がればいいのに。馬鹿じゃないのか。

 心の中を一瞬でそれだけの思いが駆け巡ったが、それらは全部が全部、絡まった毛糸のように言葉にはならずに消えた。
 紋志が手をスローモーションのようにそっと離して助手席側へ回るのを見送る。


 彼を、あの女主人の元へ返すのか。それとも追手に怯えながらでもひたすら逃げるのか。どちらが彼にとって良いのだろう。
 再び生まれた迷いを腹に沈めながら、自分もドアを開け運転席に座る。

 

 戻るのか。それとも先へ進むのか。

 

「お疲れ様でした」
「───?!」
 一瞬のことだった。
 運転席の背後から伸びてきた手が佑介の喉元を抑えている。


 誰だ。
 いつの間に車の中に隠れていた。
 目線だけで紋志の姿を探す。
 助手席に乗り込もうとしていた紋志は、ドアに手を掛けたままやはり同じように誰かに拘束されている。

 

──しまった。
──追跡されていた。

 

 ずっと同じ車が視界に入っていれば追跡に気づいていただろう。しかし高速道路は所詮一本道だ。発信機か何かがこの車に仕込まれていたなら、物理的な追跡とセットで十分可能だった。まさか、屋敷で日常的に使われている車にそこまでの装備を仕込んでいるとは思っていなかった。迂闊だった。

「あ、ご心配なく。暴れず騒がずいてくれたら別に危害は加えませんよ。まあ俺はあんたの動きを一瞬で止めることくらい出来るんで暴れられても無駄だけどね」

 聞き覚えのある声だ。
 あの──嵯院椎多の部下の少年のような風体の男。"K"とか呼ばれていた──

「ここなら電波大丈夫そうなんで、これ、出てもらえますか。おたくにとってそれほど悪い話じゃないと思いますよ」
 Kは右手で佑介の喉元を抑えたまま、左手で携帯電話を差し出した。

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 一瞬の沈黙、それを破ったのは堪えきれないような笑い含みの椎多の声だった。
「逃げたって?どういうことだ」
『追跡は続けていますが、こちらに戻る気はなさそうですね』
 スピーカー通話にした電話の向こうの睦月の声もなかば呆れたように笑っている。

 一旦嵯院邸を出ることを許可された紋志は邨木佑介の運転する車で目的地へ向かっていた。しかしその後嵯院邸とは全く方角違いに向かっているという報告である。
 嵯院邸の車には全台車載電話と発信機が取り付けられており、睦月によればさらに別の車によって追跡もさせているという。
 もっとも、普段から誰にでもそこまでの追跡をしているわけではない。青乃が異常なまでに執着していた紋志を簡単に帰宅させるならば邨木が何か指示されていてもおかしくない──そう警戒しての追跡である。ところがその邨木がまるで青乃の命令を無視したかのように嵯院邸から紋志を逃がそうとしているようなルートで車を走らせていることが分かったのだ。
 報告によれば邨木の運転する車は高速道路を猛スピードで走っているという。
 椎多は脇に立ってそのやりとりを聞いていたKにちらりと視線をくれ、顎をしゃくって見せた。
「おい、K。とりあえずその追跡に加わってくれ。どのみち高速ならうまくいけば追いつく。ヤツは出来るだけ遠くまで行くつもりだろうから高速を降りる前に捉まえられたら面倒じゃない。うまく追いついたら催眠術でも何でも使って確保しろ」
 相手は傭兵上がりだ。殺したり傷つけたりせずに捕らえるにはKの能力が有効だろう。


 Kが指示に従って飛び出して行ったのを見送ると椎多は再び睦月との電話に戻った。
「Kを向かわせたからルートを指示してやってくれ。携帯電話は持たせてある」
『わかりました。それにしても、どういうことなんでしょうねえ。例のエサが実はもう死んでいることを知ってしまってヤケにでもなったんでしょうか』
「ああ、なるほど。だとしてもじゃあ誰がそれをヤツに漏らしたのかって話だ。とりあえずヤツには色々聞きたいな。おもしれえ」
 利用しようとしていた者がこちらを裏切って逃げたというのに、椎多は面白いゲームが始まったかのように楽しそうに言った。

「そうそう、邨木を使おうとしてた例の隣との件、こっちでやることもあるんだろ。飯を食いにいく仕事なら大歓迎だ。関係者の資料は回しといてくれ。ケンタは元気か」

『あの子は人と仲良くなるのが得意なのは先刻ご承知でしょ。うまくやってくれてますよ』

 通話を切ると今度は柚梨子に向き直る。
「この件はまだ青乃の方に伝わらないように情報管理だけ頼む」
 青乃側はすでに自分の身の危険を冒してまで青乃の指示に従う者は数少なくなっている。もしかしたら龍巳くらいのものかもしれない。癇癪を起しては周りの者たちを解雇したりしているうちに、自分を盾にしてでも青乃を護ろうという部下を──青乃は自ら手放していったのだ。
「ただ、伯方にだけは邨木と桧坂はこちらで追っているから手出し無用と伝えておこう。青乃がヒステリックに指示を飛ばしているだろうが適当にあしらっておけと。要注意は龍巳だけだ。つまらん動きをするようなら拘束してでも止めた方がいい。あいつだけは青乃の命令なら本当に何でもやる」

 桧坂が以前生活していた『恭太蕗』という飲み屋が火事で焼失したという報告は受けていた。
 おそらく、青乃が指示したものだ。実行犯は龍巳かもしれない。

 そこまでやってでも、桧坂を取り戻したいのか。

 青乃にとってあの桧坂紋志という若者は、一体何なのだろう。
 しかし椎多はその青乃の行動が、思考回路が、理解できなくはないと漠然と感じていた。
 手に入れたいと思ったものを、なかば壊してまで──それは、椎多が青乃に、そして紫に対してしてきたことと大差ないのだ。

「あと──昨日柾青さんが電話してきた件だが車と人の手配は」
「それは手配済です。今日の夕刻にでも。柾青様の方へも連絡済です」
「すまんな。あっちはあっちで何か大変なようだが、あの場に彼が居合わせたのは偶然だったんだろうか」
「そこまでは……」
 柚梨子は苦笑して首を傾げた。

 社長業の方も決して暇ではないのに、椎多は邨木が逃げた件や組の方で展開している案件、柾青から依頼された件にまでひとつひとつ当たっている。これが日常になっているから当たり前のように受け取っているが、時折我に返ったように思う。


──こんな大きな会社の『社長さん』なんだから、仕事は全部部下に任せてゴルフでもやってのんびり過ごす日があってもいいのに。

 

 それでも嵯院椎多はいつも何か忙しくしていないと気が済まないらしい。
 いつまでも、『何か』から追い立てられているように。

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 Kの差し出した携帯電話を受け取る。その瞬間にも相手の腕を取れないかと考えたが外で紋志も囚われていることを考えると迂闊な動きは出来ない。
 佑介はそのまま携帯電話を耳にあてた。邨木です、と小さく言うといきなり笑い声が聴こえた。
『おまえ、なかなかやるな』

 電話を通した声は初めて聴くがおそらく声の主は嵯院椎多だろう。
『なんだ、妻の仇はもういらないのか。青乃にもっと美味しい餌でも与えられて別の目的のために動いているのか。それともその桧坂紋志に惚れて駆け落ちでもしようというのか』
 ドキリとした。
 何故ドキリとしたのかが佑介は自分でもわからない。

 

『なら条件を少し変えてやろう。おまえたち二人を、俺が青乃から匿ってやる』

 

「え?」
 返事をしないようにしていたのに思わず声が出た。
 どういうことだ。
『青乃はおまえらを半狂乱になって探している。おまけにおまえは指名手配中だ。このまま逃げ切ってつつましく二人で生活でもしていくつもりだったのか?自分でそんなのは不可能だというくらい察しはつくだろう。そこでだ』
 痛いところを突かれた。実際、この後どうやって逃げ切るのか。一旦逃げ切れたとしてもどこかに根付いて生きていくことなど出来るのか。そのヴィジョンは何ひとつ出来ていなかったのだ。
『一旦うちへ戻ってこい。うちの屋敷には空き部屋も山ほどある。青乃側の人間は新棟には出入りしない。屋敷内で行動する場所を守れば、まさか探している者が同じ邸内にいるとも気づかないだろう。警察も入らない』
「そんな事をするメリットがそちらに何かあるのですか」
 うっかり信じてあの女主人に引き渡されでもしたら自分はまず殺される。紋志は──一生あの部屋に軟禁されてあの女主人の、恭太郎を殺したあの女の慰みものにされ続けてしまいには食らい尽くされてしまうかもしれない。
『おまえにはうちの組のために鉄砲玉になってもらう。おまえの腕が本当にいいならただの鉄砲玉じゃなく生きたまま色々役にたってもらえるだろう。紋志はしばらくほとぼりがさめるまでは居てもらうことになるし元の生活には戻れないかもしれないが、青乃の目の届かなそうな土地での生活を俺なら与えてやることは出来る。おまえがそいつと共に生きたいとか言うなら暫く役に立ってもらった後にそこへ行くのもいい。おまえは紋志を青乃から助けたいんだろう?俺についた方がうまくいくぞ』

 確かに──
 嵯院の言うことは自分と紋志にとって渡りに船だ。
 紋志は何もかも諦めたように青乃のもとへ帰るのも厭わないようなことを言っていたが──
 紋志を手に入れるためにあの恭太蕗という店を吹き飛ばすくらいのことをする青乃が、ただ戻ってきた紋志を可愛がったり閨の相手をさせるだけで済ませるものだろうか。
 それならやはりとにかく青乃からだけでも逃げ切れる方法を選んだ方が利口かもしれない。

 

「少し、彼と話をさせてもらえないか」
 電話の向こうではなく、自分の喉元を抑えているKに言った。紋志の気持ちも聞かずに自分が勝手にその道を選んだら、青乃のしていることと大差ないような気がしたのだ。
 佑介から一旦携帯電話を受け取るとKは小さく合図をした。車の外で紋志を抑えていた者がそれに呼応して助手席のドアを開け、紋志を助手席に座るよう促す。目線だけで紋志の状態を確認すると、両肘を曲げた状態で手首を交差させ、そこを縛ってあるようだった。

──あれは。

 

 紋志を抑えていたのは小柄な男かと思ったら、それは女だった。
 あの、みずき──とかいう、間の伸びた喋り方をする頭の悪そうなメイドだ。しかし紋志を抑えたまま動かしているその動きにはひとつの無駄もなく隙もなかった。

 

──ただのメイドかと思ったら。

 そうだ。
 青乃づきのメイドのくせに、この女は嵯院からの伝言を伝えてきた。最初から嵯院のスパイとして青乃に付いていたのだ。あの間の伸びた雰囲気は演技だったのか。

 みずきは紋志に不穏な動き──紋志にはそのような意思ははなからないのだが──をさせないようにしながら素早く自分は助手席の後ろの席へ乗り込んだ。そしてKと同じように紋志の喉元を抑える。

 4人が車に乗った状態になり、短い沈黙のあと佑介がかいつまんで嵯院からの提案を説明した。紋志は表情を変えずにそれを聞いている。説明を終えてどう思う?と尋ねると紋志は小さく長い息を吐いた。
「佑介さんは他からも追われているんだからそうしてもらったらいいと思う。でも僕はやっぱり青乃さまのお側に戻ってあげた方がいいんじゃないんですか。どうせもう戻る場所も行く場所も無くなったんだし、青乃さまの望んだ通りお気がすむまで玩具になればいいんだ」

 それでは振り出しに戻ってしまう。
 この半日は何だったのだ。
 それとも紋志は本当にそれを望むというのだろうか?
 本当に?
 恭太郎を殺されたのに?

 

「おまえ、何度言えばわかるんだ。自分の人生を簡単に他人の玩具になんかするな。何度だって言うがおまえは自分の人生を自分で選んで生きるべきだ」
「あのう、佑介さん」
 可愛らしい声が佑介の演説を遮った。


 みずきは後部座席から紋志の首を片手で抑えたまま、運転席の佑介に向き直り首を傾けてにこにこと笑っている。上下黒の薄手のスウェットで、頭はフードを被っている。一見女性の身体であることがわかりかねたのはあまり身体の線が出ない程度には余裕のあるサイズのものを着ているせいなのだろうが、かといって動作の邪魔になるほどぶかぶかではない。
 メイドの制服姿しか見たことがなかったが、こうして見ると意外に少年っぽさがある。

「佑介さんはぁ、未音さんの仇はもういらないの?」

 

 前方に戻しかけた目線をギクリと再びみずきに移す。
 この女、妻の名前まで知っているのか。
「あんなに妻の仇のゴミがどうとか言ってたくせに、もうどうでもよくなっちゃった?その人を助けてあげることの方が大事になったの?」
 みずきの声が次第に大きく、早口になってくる。口調ももういつもののんびりした可愛らしいものではなくなっている。隣で佑介の喉元を抑え左手に携帯電話を持ったままでいる兄・Kは眉を寄せて戸惑っている。

「知らない男に襲われておなかの赤ちゃんを守るために必死で戦ったけどかなわなかったんだよね。一人に力で押さえつけられてもう一人に汚いモノ身体の中心まで無理やりつっこまれて、それをかわりばんこに何度も何度もやられたんだよ。何度も何度も、死ぬまで。ねえ佑介さん、未音さんがどれだけ怖かったかわかる?男のあそこみたいなあんなグロテスクな色の気持ち悪いもの、大好きな彼氏のじゃなきゃ触ったり口に入れたり身体の真ん中に入れさせたり出来るわけないじゃん。知らない男の気持ち悪くて汚いモノなんかあたしみたいに嚙みちぎってやって、ぶっ殺しちゃえば良かったんだよ。だって佑介さん助けに来てくんなかったんでしょ。自分でやるしかなかったじゃん。それが出来なかったから未音さんは死んだんだよ!」

 やめろ、と。
 やめてくれ、と叫びそうになったが声が出なかった。
 先ほどサービスエリアで食べた旨いものたちが一斉に喉元に上がってきたのをなんとか寸前で飲み込む。

 

「何が妻の仇のゴミを処分するために自分は生きている、よ!それくらい妻を愛してましたって誰に向かってアピってんの?バカじゃないの?そんなことしたって未音さんは帰ってこないし喜びもしない!未音さんはね!仇を討って欲しいんじゃないの!助けて欲しかったんだよ!!あんたに、大好きなダンナに、生きてる間に助けて欲しかったの!!」

 みずきの一人舞台になっていた。
 車の中にいる3人の男は誰一人身動きも出来ずにいた。

 

「未音さんはそいつらに犯されてる間ずっと、意識が遠のいて命が消えてしまうその時までずっとあんたのこと呼んでたんだよ!」

 

 たすけて、佑介。
 たすけて、佑介。
 たすけて、ゆうすけ──。

 

「だけどあんたは助けに来てくれなかった。今更仇討ちなんかしてもらったって何にもなんないじゃん!妻思いアピールうっざ!!あんたなんかそんな自分が大好きなだけじゃん!!!」

 

 みずきはその現場にいたわけではない。
 未音がどのように殺されたのかを克明に調べたわけではない。
 けれどそれは、みずき自身の叫び──

 

「妻思いアピールはうざいけど、それでも仇を殺したいのはわかるからあたし黙ってた。でもそれももういらなくなったんだ?もう妻思いアピール終了なんだ?!その程度だったんだ?!なんなの?なんなのあんた、もう──」
『やめろみずき!K!みずきを止めろ!』
 携帯電話の向こうの叫び声が漏れているのにKは漸く気づいた。

「死ねよ」

 

 言葉と同時にみずきが右腕を小さく振り上げる。
 スウェットの右袖に仕込んであったらしい長く太い針が指の間から覗いた。
 咄嗟に携帯電話を持ったままのKの左腕がそれを叩きつけ──
 次の瞬間、みずきは助手席と後部座席のシートの隙間に崩れ落ちた。
 佑介と紋志は何が起こったのかわからず茫然としている。

「──組長すんません俺びっくりしてて。今みずきは眠らせました。これからこいつらも連れて帰ります」
 それだけ言うと携帯の通話を切り、Kは外に向かって合図をした。
 最初にこの車を追跡していた車の者がようやく追いついて駆け寄って来ている。
 助手席の紋志をそちらの車に、Kたちが乗ってきた車には意識を失っているみずきを念のため腕を拘束して移す。そして佑介を運転席から引きずり下ろすと、佑介はその場でついに堪えきれずに嘔吐した。ひとしきり吐ききるまで顔をしかめて見守り、ひとまず車から逃げないようにだけ催眠術をかけ後部座席に乗せ換えてKが運転席に座った。
 佑介は放心状態で後部座席で横たわっている。
 Kもまた、腹の中に重く得体のしれないものがずっしり沈んでいるように感じた。

──Kくん、あたしも行く。連れてって。

 

 椎多の指示で追跡に加わるために部屋を出た時。
 みずきがそう言って勝手についてきたのだ。
 紫から指導を受けていた時何度かみずきと組手をしたことがあるが、なかなかどうして強かった。だから少しでも戦力になるかと思ってそのまま連れてきた。
 まさか──こんなことになるとは思わなかった。

 みずきは最初から佑介の追跡に加わるためにわざわざ社の方へ出向いて待機していたのだろう。

 Kには予測などする術はなかったけれど、おそらくは佑介を"殺す”ために。

 Kと2台の車は来た方角へと進路を戻す。
 屋敷に帰り着いたのはすでに深夜に近い時刻になっていた。

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 みずきは腕の拘束を解かれてベッドに横たわっている。
 現在起居している部屋ではなく、以前いた柚梨子の隣の部屋だ。
 柚梨子はベッドの横に腰掛けて妹の寝顔を見下ろしていた。

 


 椎多が電話をスピーカーにしてKの持つ携帯電話と通話していたのを後ろに控えた柚梨子も聞いていた。
 みずきの声が通話に交じり始め徐々に興奮状態になっていこうとした時、椎多はそれを柚梨子に聞かせまいとしたのだろう、慌てて受話器を取ってスピーカーを終了させようとした。それに割って入ってみずきの言葉を聞く。
「やめろみずき!K!みずきを止めろ!」
 椎多が怒鳴った声で柚梨子は我に返った。
 携帯の向こうの混乱はどうやらKが対処し、事なきを得たようだ。

 通話が切れたあと部屋を支配した長い沈黙を椎多も柚梨子もなかなか自分からは破ることが出来ずにいた。
「──何か冷たい飲み物をくれ」
 沈黙を破った椎多の声にはい、と言おうとして声が出ないことに気づいた。声が喉に張り付いて外に出ない。とにかく前室の冷蔵庫に冷えた炭酸水があることを思い出し、それを取りに行く。身体はなんとか動いた。

「旦那様、ご存じだったんですか」
 言いたいことや聞きたいことが一斉に喉の根元に殺到して渋滞を起こしているようだ。
 何を、とは言わないのに、椎多は降参したように息を吐き、頷いた。
「おねえちゃんには内緒にして下さいね、って言われた。おまえには隠し通すつもりだったんだろう。心配かけたくなかったんだよ」
「それを知ったうえで、みずきにもあのお仕事をやらせてらしたんですか」

 あれほど懇願したのに。
 みずきの手を汚させないように自分がすべて被ってきたつもりだったのに。

 

「──腕のいい殺し屋だよ。みずきは」
 ずきりと胸が痛んだ。
 椎多の顔を見ると、奇妙なくらい優しく、穏やかな顔をしている。
 みずきの告白が真実なら、さらに人殺しの仕事などみずきの心の傷を癒すどころかさらに大きく切り開くようなことではないか。どういうつもりでそんな事をさせていたというのだろう。

 あたし、もうずいぶん旦那様の言葉や表情の奥で何を考えているのか、わかるようになってきたと思ってた。
 あれはただの自惚れだったんだわ。
 今、この人が何を考えているのかあたしには全然わからない。

 

「あたしを騙してらしたの……」
「そうだな、みずきの手を汚させないという意味ではそうだ。悪かった」
 悪びれるでも開き直るでもなく、ごく自然に言う。
 柚梨子の知っているどのパターンにも当てはまらなかった。

 椎多は炭酸水を飲み干すとデスクの自分の椅子に深々と沈み込み、何事もなかったように笑って見せた。
「連中が帰ってくるまでもう少し時間はかかるだろうが、おまえはみずきについてやっててくれ。他のことはこっちでやる。先に屋敷に戻って準備でもしておいてやれ」

 


 3台の車が帰って来るとKと他の者の手で桧坂紋志と邨木佑介は準備された邸内の一部屋へ通された。外から施錠ができ、監視カメラが備わった部屋だ。個別にさせる必要は無くともひとまずある程度の話を聞いてからでないと今後の処遇は決められない。
 みずきは柚梨子が預かり、この部屋へ連れ帰った。


 時刻はもう明け方に近くなっていたが、みずきは眠ったままだ。
 それをじっと見下ろしたまま柚梨子はあの電話ごしに聴こえてきたみずきの声を何度も反芻していた。
 最後に聴いた「死ねよ」という声は、柚梨子の一度も聞いたことのない声音だった。

 あたし、みずきの何を見てきたんだろう。
 桂を失ってから、その分までみずきを守らなければといつでもみずきのことを一番に考えてやってきたのに。あれが真実なら、そんな酷い目にあって辛い思いをしたはずのみずきにあたしは全く気付いていなかったのだ。


 たすけて、佑介。


 みずきもきっと、心で叫んでいたはずだ。

 

 たすけて、お姉ちゃん。
 たすけて、お姉ちゃん。
 たすけて、お姉ちゃんと。

 

 

 全く眠気も感じないと思っていたのに、座ったまま眠りに落ちていたのだろう。
 首ががくりと下がった拍子に弾かれたように顔を上げ、目をぱちぱちと瞬かせてみずきの顔に視線を戻した。

 みずきは、目を開けていた。

「みずき───」


「お姉ちゃんもあれ、聴いたの?」

 

 どれくらい姉の寝顔を見ていたのだろう。そうしながらみずき自身も心の整理をしていたのかもしれない。
「どうしてお姉ちゃんに話してくれなかったの。つらかったでしょう。ごめんね、何も気づいてあげられなくて……」
「だって、嘘をついて彼氏とお泊りに行ってそれで危ない目にあったなんて言ったらお姉ちゃん怒るでしょ。それからものすごく心配したり腫物に触るみたいにするじゃない。何も無かったことにしたかったの」
 柚梨子は手を伸ばしてみずきの頬を撫でる。みずきはうっすらと笑っていた。
「旦那様には話したのに、あたしには話せなかったの……」
「だってお姉ちゃん女だもん。どんな酷い目にあったのかリアルに想像できちゃうじゃん。そうしたらお姉ちゃん、自分が同じ目にあったみたいに傷つくでしょ?」
 あんたって子は──と小さく呟くとみずきはのろのろと身を起こして掛け布団の下で膝を立て座った。頭をその膝の上に乗せて姉の顔をじっと見ている。
「旦那様はそれを知っていてあんたにもお仕事をさせてたのよね……酷い人だってわかってはいたけど、そんな……」
「組長のこと悪く言わないで」
 みずきは少し口を尖らせている。それは柚梨子のよく知っている妹の可愛い表情のひとつだ。


「あたしがお願いしたの。あたしはもう人殺しだから、いまさら何人殺したって同じだし、その分お姉ちゃんのお仕事を減らしてって。あたしが頼んだんだよ。組長は優しかったよ。お願いした通りにしてくれたの」

 

 妹は──
 自分と同じひとを愛しているのかもしれない。

 

 その考えがよぎったことを敏感に感じ取ったようにみずきは頭を上げた。
「そうだよ、組長はあたしのことも可愛がってくれるの。お姉ちゃんは組長以外の男の人とか知らないだろうけど、あたしが付き合ってた他のどの男の人より組長は優しいし気持ちよくさせてくれる。あたし組長が大好き」

 どきどきと、心臓が早鐘を打っている。

 それを見透かしたようにみずきは笑う。

 

「いまお姉ちゃん、思ったでしょ。みずきがあのひとを好きなら、自分は身を引こうかとか」

 ベッドの上のみずきは少し腰を浮かして姉の方へ身を乗り出した。それに気圧されたように思わずびくりと背筋を伸ばす。みずきの言う通りのことが、ちょうど頭に浮かんでいたのだ。みずきは姉から視線を逸らすことなく、ふっと目を細めた。柚梨子が見たことのない冷たい光がそこに宿っている。ねえ、お姉ちゃん──


「そんなことしてあたしが喜ぶと思ってるの?小さい頃お姉ちゃんが自分のおやつを分けてくれた時みたいに、やったー!ありがとうお姉ちゃん!って大喜びするとでも?バカじゃないの?」

 ねえ、お姉ちゃん。
 あたしいつまでも保育園に通ってる小さいみずきじゃないんだよ。
 中学の頃からお姉ちゃんが必死に働いてくれたおこづかいで夜遊びに行ってナンパされて彼氏作って遊んだり。
 あのことがあった後も同じようにナンパされに行ったりして。
 あたし、彼氏10人くらいはとっかえひっかえしてたの、お姉ちゃん知らないでしょ。
 お姉ちゃんはあたしのことずっと守ってるつもりだっただろうけど。
 それって、Kくんへの罪滅ぼしをあたしにしてただけだよね。
 あたしを一番にすることで、自分の罪の意識を償ってる気持ちになりたかっただけだよね。
 それ何て言うか知ってる?
 『自己満足』だよ。
 Kくんとは無事に再会出来たんだからもういいじゃん。
 お姉ちゃんは自分の幸せのことだけ考えなよ。
 もう──

「ひとりじゃ何も出来なくてちょっとおバカで可愛いお人形を演じるの、やめてもいいかな、あたし」

 

 最後には鼻と鼻が付きそうなくらい顔を近づけて、みずきはもう一度にっこりと笑った。
 呼吸が出来ない。
 何を言えばいいのかもわからない。

「というわけで、あたしあっちの部屋へ戻るね。今日は遅番だけどもうちょっとだけ寝て準備しなきゃ。あ、あたし組長のこと独り占めしたいとか全く思ってないし別に姉妹どんぶりとか気にしなくていいからマジで」
 みずきは何事も無かったかのようにベッドから起き上がり、解いてあった髪を束ね直した。黒いスウェットの上下は、そのままなら単なる部屋着にしか見えない。
 すたすたとドアへ向かい、みずきは振り向きもせずに部屋を出ていった。


 柚梨子はそれを見送ることすら出来ず、息苦しくなって呼吸を忘れていたことに気づくまでの間、ぴくりとも動けなかった。

Note

すごく久しぶりの新作(続き)を書きました……。​

TUSオリジナルではこいつら何故か一遍逃げたあとどっかで待ち合わせをしている間にそれぞれ捕まったり殺されそうになって某医者に助けられて記憶喪失になったりとどんどん人間関係がややこしくなっていった気がするんですが、オリジナル喪失したのをいいことにもう全然別の展開をさせ始めております。

というわけでオリジナルの主人公カップル(まだカップルになってない)そっちのけでゆりこみずき姉妹+Kの3きょうだいにスポットを当てる感じになりました。姉妹がここへやってきた時に椎多が面白い研究対象がきたみたいな気分になってたけど、ついに姉妹の関係が変化してきたところです。本当はゆりことみずきのごたごたはもっと終盤に近いところでやる流れだったんだけど、ここで一度ヒビを入れておくことにしました。みずきの「バカじゃないの」2連発、書いてて痛快でした(???)。

​ちなみに佑介の妻の未音さんもTUSチャットの参加者のHNから。本当はHNで実際に使われてた漢字だったんだけど一文字変えました。

​巻き込まれ元ちゃんとまさお兄さんの話は次で。(2021/10/5)

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