Sin.co -Re:The Ultimate Sin- main tales
紫 -3-
ぼんやりと。
殆ど動かない右手を見つめる。
───どうしても側から離れろというなら、俺があんたを殺しますよ
自分の台詞を反芻する。そのまま身体を折り曲げ両手で顔を覆った。
椎多を殺す?
そんな事が出来るわけがない。
いつの間に、あの子をこれほど愛しく思うようになったのだろう。
自分の中にこれほど狂気じみた独占欲があるなど、考えもしなかった。
独占欲?違う。
俺はただ、彼の側で、彼を守っていられたらそれでよかったのだ。
それだけが俺の生きていく理由だったのに。
椎多は、おまえは不要だと断じたではないか。
否、椎多は自分の代わりに紫が傷つくのが嫌だと言った。不要だから離れろと言ったわけではない。
まるで誰かと会話するように、右手と左手を交互に見つめ自問自答を繰り返す。
瞼の裏に、今まで焼き付けてきたあらゆる椎多の姿が浮かんだ。
最後にはそれはひとりの女性の腕に抱かれた赤ん坊の姿へと変わり、そして嵯院七哉の面影へと変化する。
椎多を頼むと。
椎多を守ってくれと。
嵯院七哉は言い残した。
「七さん──」
七哉に拾われた子供の頃からの呼び名。
他の者に示しがつかないからと、長じてからは人前では使わなくなっていた呼び名でとうに失ったその面影に呼びかける。
「俺はどこで間違った……?」
七さん。
姐さん。
あんたたちの大事な椎多さんを。
俺は守るどころか──
椎多の頚を絞り上げた左手に視線を移す。
敵は───
おまえだったのか───
葛木家から派遣された青乃警護担当者たちとの定例の会議を、ひとまず何事も無かったように済ませると紫は深く息を吐いた。
椎多の指示通りにこの屋敷を退くとしたら、この会議に出席するのはおそらくこれが最後になる。
否。
椎多が自分を殺すとするなら、いずれにしてもこれが最後になるだろう──紫は何故か奇妙なほど静かな精神状態になっていた。
自分が死んでここから消えたとしたらこの屋敷の警備の指揮を誰がとるべきか?
ついさっきまでの煩悶が、日常の会議を経たことで何故か突然業務的な悩みへと変化していた。冷静なようでいて実は自分の異常な精神状態に蓋をしているだけなのかもしれない。無機質なまでに業務として後のことを考えることで、平静を取り戻そうとしているかのように。
組の方から応援に来させている若い者や柚梨子など、最近の椎多が側に置きたがるのはさほど煙たくない者ばかりで嵯院邸の警備全体を統括させるにはあまりにも経験不足に思えた。
自分は椎多に近すぎたのだ。
近すぎて、この巨大な邸宅の警備についてほぼすべてを紫一人で統括してきてしまったことに気づいていなかった。本来ならもっと役割分担と各担当者に責任を負わせ、指揮者がいなくともある程度の曲は演奏出来るような状態を構築しておくべきだったのだ。
自分は椎多一人を護衛しているただの一兵卒であれば良かったのに。
人を使うのにはやはり向いていなかったのだな、と今更ながら思った。
ぼんやりそんなことを考えながら退出していく会議出席者の後ろ姿を眺める。
最後まで残っていたのは、青乃側の責任者・伯方だった。
そういえば伯方はかつて海外の紛争地などで傭兵のようなことをやっていたという経歴を持っている。すでに老齢に差し掛かったといっていい年齢のため今は部下の監督が主業務で、現在ではどの程度の身体能力が残っているのかはわからない。
部下の監督か──。
青乃側の責任者とはいえ、現在は嵯院に雇用されているという立場上最初から紫をはじめとする"嵯院側"に対してビハインドを負っているようなものだ。何某かの交渉を行う時も結局あちらにうまく進まないのは伯方の能力不足というわけではないのだろう。
邸内の敵対関係そのものを解消することが出来たなら、伯方にあとを任せるというのは意外と悪くない案かもしれない。
「伯方さん、少しいいですか」
ふとした思い付きではあったが時間はない。ここで声をかけておかなかれば次に伯方に会う前に自分はこの世を去っているかもしれないのだ。
「このあと、もしお時間があればですが──一度お手合わせ願えませんか」
伯方は怪訝な顔で紫に向き直った。
伯方からすれば紫はこれまで散々煮え湯を飲まされてきた気にくわない相手だ。
「以前からあなたの経歴には興味がありましてね。一度本気で闘ってみたいと思っていたんです」
「どちらかが死ぬようなことになったら色々面倒では?」
本気で闘う、と言っただけで死ぬまでやることを想定する、やはりただのロートルではないのだな。
「確かに。では互いに丸腰で、相手を捕縛するというのはいかがです。時間は無制限で」
「そのルールは構いませんが私は見ての通り前線はとうに引退して身体も鈍っているOBですよ。あなたの相手には不足では」
この男──
遜ったようなことを言ってはいるがそのルール自体は平然と構わないという。その実、自信はあるのではないだろうか。面白い。
「なに、私は私でこの通り右手首から先は使い物にならない。プラスマイナスゼロです」
伯方がこの屋敷に入って随分経つが、紫がこれまでに見たことのないほど生き生きとした表情で頷いた。
「いいでしょう。新棟の道場──トレーニングルームですか。そちらに伺えばいいですか。1時間後でよろしければ」
紫もまた、ここ数年の中でもしかしたら一番晴れやかな気分になっていた。
伯方との手合わせも、何の損得もなく楽しみだと思えた。
そして、この屋敷のあとのことを彼が引き受けてくれたなら──それでもう自分のやるべきことは終わる。
紫は気づいていた。
そんな、終末が見えているがゆえの高揚感が今の自分をかろうじて支えていることを。
腕に微かにロープの跡が残っている。
伯方との手合わせに紫は敗北した。数十分にわたる丸腰での格闘の末、最終的に紫の方が捕縛されてしまった。何がロートルだ。何が鈍っているだ。とんだ狸親爺だった。
微かに笑みが漏れる。
伯方は紫の申し出を戸惑いながらも了承してくれた。とはいってもあくまでも「もしもの時には──」という想定での申し出である。
まさか、紫がこの後数日中には主人である嵯院椎多に殺されようとしているだなどと。
伯方は夢にも思っていないだろう。
ロープの跡のついた左腕を見つめる。
どうだ、おまえ。
まだ椎多さんを殺してしまいたいのか。
いっそのこと、椎多さんを殺して自分も死ぬという道もなくはないぞ。
皮肉に口端を歪める。左手の指を握ったり開いたりしてみた。
次に右手に目を落とす。
こちらはやはりいくら握ろうとしても指はどれも微かにぴくり、ぴくりと動くだけだった。
能無しめ。おまえが役立たずになったからこいつが暴走してしまった。
──ばかばかしい。
それぞれの腕が独立した意思など持っていてたまるか。
椎多さんを殺すなどとほざいた口も。
あの首を絞めあげた左手も。
すべて俺自身の内から出たものだ。
暴走したのも狂っているのも全部、俺自身だ。
やはり俺はこれ以上彼の側にいてはいけなかったのだ。
まだ少しは正気が残っているうちに。
本当に制御がきかなくなって、本当に、椎多さんを殺してしまうようなことになる前に。
七さん。ごめん。
もう俺が椎多さんを守るにはこうするしかない。
それから紫は自室のバスルームで熱いシャワーを浴び、汗を落とした。ここ暫く──もしかしたら数年間の間、薄くあるいは濃く紫の心の中を覆っていた霧が晴れていく気がする。
冷やしておいたビールを呷ると、ここのところ味覚を意識することすら忘れていたことに気づいた。不思議なものを見るようにビールの缶を眺めていると──
ノックの音がした。
けれど、それは紫のよく知っているあの暴君のノックではないことはすぐにわかる。
柚梨子だった。
久しぶりのサッパリとした気分に水を差されたような気がして小さく顔をしかめる。
「あの、少しだけ──かまいませんか?」
「悪いが今は誰かと話をする気分じゃない」
しかし柚梨子は食い下がった。
「……旦那様はあなたが自分を殺すかもとおっしゃってました」
ぎくり、と手をこわばらせると仕方なく柚梨子を部屋へ入れる。こんな話、誰か他の使用人にでも聞かれてはならない──その程度の判断はまだ出来るらしい。
部屋へ入れられはしたものの、閉めたドアの前に立ったまま柚梨子は一度深く息を吸い込んで顔を上げた。
「この間、旦那様の頚に酷い痣ができてたんです──」
「………」
なるほど、紫が一人で煩悶している間、椎多は柚梨子に可哀想にと慰めてもらっていたのか。そう思うと また胸がぎりっと痛んだ。
あの時の痣を見つけて数日の間、紫にそのことを訊ねに来ていいものかどうかを柚梨子はずっと悩んでいたのだろう。
「紫さんなんでしょう?」
紫には返事をする義理はない。柚梨子に自分と椎多のことを知られたくもなければ理解されたくもない。「
「どうして?紫さんは旦那様を愛していらっしゃるんでしょう?」
ギクリと逸らした視線を柚梨子に戻す。
もしかしたら初めて──
紫は柚梨子の顔をまじまじと見た。
紅い唇を噛み締めて今にも泣きそうな顔をしている。
「あたし、わかりません。どうして愛しているのに殺すなんて」
「おまえに話すことは何もない」
こんな小娘に自分の心を見透かされるなど、我慢ならない。
柚梨子の腕を掴み強引に部屋の外へ追い出そうとしたがなおも柚梨子は食い下がった。
「旦那様はあなたを殺せないって」
動きが止まる。
「──だから死ぬのは自分の方だって!冗談のふりして仰ってたけど、あれは本心です!お願いだからこんな哀しいことおよしになって──」
柚梨子は泣きながら縋るように言った。
心根の優しい娘なのだろう。
椎多のあの外面や激しさに隠れた想いも察する繊細さも持ち合わせている。
しかし───
自分がいた場所に、この娘が収まっていることを想像するとそれだけで胸の奥がちりちりと焦げてゆく。
自分が正常な判断がすでに出来なくなっていることを、紫は再確認せざるを得なかった。
「おまえにはわからなくていい事だ」
「紫さん──」
なおも食い下がろうとする柚梨子の頬を、紫の左手が払う。動作はごく軽いが柚梨子の華奢な身体がふらっとよろめいた。
それをじっと、射すくめるような目で追うと、まるで訓練をしている時と同じ口調で言った。
「どうした。それで椎多さんを護れるつもりか」
柚梨子が打たれた頬を押さえたまま耐え切れぬように後ずさり出て行くのを、目を眇めて見送る。
──おまえには俺の気持ちなどわからない。
──いいや、理解ってはいけない。
──決して。
柚梨子の消えたドアを閉じ、紫はそのドアに額を置いて目を閉じた。
どれほどの時間が経っていたのだろう。
ビールを飲み干したあと、いつもの習慣でいつコールされても飛び出せるように新しいシャツを着替えていたが椅子に座ったまま転寝してしまっていたようだった。
人の気配を感じて飛び起きた。
普段ならドアを開閉する気配や微かな音の時点で目を覚ましていただろうに、久しぶりの本気の格闘によってさすがに眠気を誘うほどには疲労していたのだろう。
目線を上げると、見慣れた立ち姿が紫を見下ろしていた。
「困るなあ、ひとの女に乱暴してもらっちゃ。可哀相に頬が腫れていたぞ」
「殴らなきゃ自分の奥方も抱けないような人に言われたくありませんね」
椎多はただ小さく笑っている。
紫は立ち上がると左手を伸ばし椎多の頬に触れた。そのまま頭に回し、抱き寄せる。
予想に反して椎多はまったく抵抗しなかった。
抵抗のかわりに、自らも腕を伸ばし紫の背に回す。
まだ外から戻ったばかりのように冷えたコート。その上からでも、椎多の身体の温もりが腕の中に灯っている。
ひどく長い間そうしていたように思えた。実際にはほんの一瞬だったのだが───
反射的に身を逸らそうとした。
身に染み付いた本能のような動きで。
その瞬間紫の背にまわした椎多の左手に力がこもる。左脇腹になにかが押し当てられていた。
「──望み通り、殺しに来てやったんだ。ありがたく思え」
紫の胸に押し当てられた椎多の口からくぐもった声が聞こえた。
咄嗟に椎多の頭にまわしていた左腕を振り下ろす。
乾いた銃声が一瞬耳の機能を奪った。
火薬の匂いがあたりに漂う。
「……最大のチャンスを逃しましたね」
小さく苦笑した。
すっかり殺されるつもりでいたのに、本能というやつはどうしようもないな。
紫の脇腹が少し破れている。発砲と同時に飛び退った椎多はしかし、動じる様子もなく再び紫に銃口を向け、笑った。
「──この銃を覚えているか」
それは、ほんの小さな銃だった。常々椎多が大切に磨いているあの飾り銃だ。しかし、それが充分実用に耐えうるということは、今の発砲が証明している。
忘れるわけがない。それは昔、まだ若く力を持て余していた頃に椎多の父が紫に与えた物なのだ。
──おまえは丸腰でも全身武器のようなもんだからなあ、持つとしてもこんなもので十分だろう。
冗談めかして与えられたそれを紫は使うことなく大切に持っていた。それを椎多がねだって奪いとった。
「これは親父の形見だからって、最後には仕方なくくれたんだったな。それでもおまえはこれだけはなかなか俺に渡そうとしなかった」
椎多は構えたまま笑った。それは紫が愛したあの無邪気なものではなくひどく昏い。
「……おまえが本当に愛していたのは親父のほうだ」
息が、止まった。
「俺が知らないとでも思ってたのか?おまえと親父をずっと見ていた俺が」
違うとは言えなかった。
「おまえはずっと親父のものだった。ずっとだ。親父が死んだあともずっと」
漸く、小さく首を横に振る。
「親父が息子を頼む、と言ったから俺に従ってきたんだろう?どこまで耐えられるか試してやろうと思ったがおまえは相当辛抱強かった。そこまでするほど親父に対する思いが強いということか?」
くすくすくす。
からかうような。嘲笑にも似た笑いをこぼす。
七さん。
俺が七さんを守るよ。
守れなかった。
俺は、あんなに近くにいたのに。
姐さんも。鷹さんも。
七さんも守れなかった。
七さんの替わりに愛する相手が欲しかったんじゃない。
椎多さんを守りたかった。今度こそ。
守りたかったんじゃなかったのか。
それなのに──
いつから?こんな風に?
椎多は微笑んだままでいる。
時間が止まっているかのようだ。
「おやめください旦那様!紫さんも!」
止まった時計を動かしたのは柚梨子だった。
紫に殴られた頬を外出から戻った椎多に見咎められ、殴ったのは紫だと白状させられた。そのあとコートも脱がずに出て行った椎多のあとをつけ、二人のやりとりを伺っていたのだ。
「もうよして下さい、ふたりとも、本当は互いに大切に思い合ってらっしゃるはずなのに──」
「どけ、柚梨子」
椎多は左手で柚梨子を乱暴におしのけた。
「俺を殺そうとするやつは容赦しない。これまでもそうしてきたしこれからもだ。こいつだって例外じゃない」
「──殺せないっておっしゃったわ!紫を殺せないって!」
涙声で叫び椎多の腕にすがりつく。なんとかしてやめさせなければならない。
椎多を死なせたくない、
そして椎多に紫を殺させたくない。
必死で椎多にすがりつく柚梨子を、いつのまに歩み寄っていたのか、紫が再びおしのけた。
「椎多さん、あんたはひとつ思い違いをしてます」
右手を差し伸べる。動かない指が椎多の頬に触れた。椎多は腕を伸ばしたまま銃を握りなおす。
「これが動かなくなったのはオヤジへの義理のためなんかじゃない」
七さんの替わりでも、七さんの命令だからでもなく。
あんた自身を守るために自分はいつだって盾になってきたんだ。
そうしたかっただけだ。
それが俺が選んだ生き方だったんだ。
椎多はぎりっと唇を噛み締め、目を細めた。
「もういい聞きたくないやめろ」
「俺は」
「やめろ!!」
膝が落ちそうになってから胸を湿らせる生暖かい染みに気づく。
何故、その銃声が聞こえなかったのだろう、とそんなことが頭に浮かぶ。
椎多の顔が見える。
眉を寄せ、呆然とこちらを見ている。
手にはまだあの銃を固く握りしめていた。
──そんな顔をしないで下さい。笑って。
倒れこみそうになりながら両腕を伸ばす。届いたところで膝からとうとう力が抜けた。
ずるずると崩れ落ちる紫を、椎多は腕で支えながら共に床へへたり込む。既に椎多の服も深紅の血で染まっていた。
そのはずみでごとり、と鈍い音をたてあの銃がカーペットの上へ落ちる。
「紫……」
ぽつりとこぼした声に、紫は何か答えようとした。が、息が漏れるだけで声は聞こえない。
苦痛のためだったのかもしれない。口元が少し歪み、それが、笑みの形を作る。
それは、椎多が初めて見る紫の笑顔だった。
「旦那様──お医者様を呼びましょう?間に合うかも──」
柚梨子の涙声に椎多は首を振る。
みるみるうちに青ざめ冷たくなっていく紫を膝に抱いたまま、椎多はそこに座っていた。
手の平を見ると、紫の体から流れ出た赤いものは既に黒く固まりつつある。
それをじっと凝視めているとどうしようもなく笑いがこみあげた。
紫の体を抱きしめて笑いつづける椎多の背中を、柚梨子はただ見ていることしかできなかった。
それはまるで、声をあげて泣いているように思えたのだ。
笑って───
笑っていてください。
俺の。
大切な、愛しい、暴君。
*the end*
*Note*
これは最初に書いたのが確か2000年の暮れだか2001年の初めだかその頃(20年前…)。 最初の「TUS」を書いた勢いで書いたので世界観がわやくちゃなまま書いたもの。
何しろ、最初はチャットなどでキャッキャ笑いながらしてた話が発展したネタなもんだから、設定無理クソだし「オーサカの国」とか出てくるし警察はいなさそうだし(そのくせ軍隊はあったらしい)携帯電話とかインターネットとか無さそうだしいったいどの時代のどこの話なんだという感じでした。
その後、ある程度色んな話を書いてる間に文章の癖なんかが微妙に変わってきたりとか世界観がより現実に近づいてきたこともあって、半分以上書き直し・書き足ししたのが2005年か2006年ごろではないかと思います。 2006年あたりからはちゃんと脱稿日を記録しているのだがそれ以前はいつこの話を書き上げたとかいう記録がどっかに行ってしまっててもう(笑)。
そこからさらに約15年を経て、2021年に大幅に加筆/修正を入れました。最初の修正(2005ごろ)の後に「昔日」や「罪」の章を色々書いて人物相互の関係性などがより作者のなかでくっきり明白になったこともあり、辻褄を合わせるために色々擦り寄った結果です。
「TUS」では脇役(重要ではあるけど)だった椎多。 顔はにこやかながらキレやすく残酷とかいうキャラだったんで、まあああいう人間になった裏に過去でなんかヘビーな出来事があったんでしょうという単純な発想で、つまり 椎多に暗い過去を与える為だけに出来たのが紫というキャラでした。 酷い話だ………。
2021修正時には、この話に関しては徹底して「紫」目線からだけ書くことを心掛けました。(以前のものは椎多の視点も若干入っていた)同じあたりを書いた椎多視点のものは「罪」の7~8あたりに出てきます。こいつら心の中でうだうだ考えるだけで相手に一切伝えようと努力しないからこんなことになったんで、自業自得です。
ということでこの後もかなりお気に入りキャラとしてこのシリーズに登場する紫ではあるけど、この話の時点で既に死んでるわけで、しかも悲劇で終わってるキャラなもんだから何を書いても最後はアレだしなぁ…という。しかも過去にさかのぼった昔話でしか出せないし。 かといってここで死なさないことになるとその後が変わってしまう。可哀想だが仕方あるまい。
しょうがないので、お遊びで「ここで紫が死ななかった別の未来」のシリーズもちまちま書いてます(Anorher)